高市総理所信表明演説――障害者福祉の予算不足が生む「悲しい循環」

市総理は、所信表明演説の中で、結局、「障害者」について一言も触れることはありませんでした。前任の石破さんは、2024年の10月と11月の所信表明演説、それに2025年1月の施政方針演説においても、必ず「障害者」や「障害のある方」という言葉を用いて、共生社会の実現を目指す旨、しっかりと発言しています。

「古来より、我が国においては衆議が重視されてきました」と述べた高市総理ですが、その衆(もろとも)の中に障害者は含まれないのでしょうか。

高市さんにとっては、きっと、障害者福祉よりも、「外国人による違法行為」に「毅然と対応」することのほうが優先順位が高いのでしょう。

高市政権のもと、障害者福祉が後退してしまうことを強く危惧します。

今年の6月に内閣府が公表した『令和7年版障害者白書』。それによると、現在我が国には、約1153万人の障害者(身体障害者➞約423万人・知的障害者➞約127万人・精神障害者➞約603万人)がいるとされています。全人口に占める障害者の割合は、およそ9.3%。実に11人に1人以上が、なんらかの障害を抱える人ということになります。

しかし我が国の場合、OECD38カ国(いわゆる先進国)の中でも、極めて障害者福祉の予算が少ない国として知られています。

その結果、どんなことになっているのでしょうか。私自身、大変驚かされ、かつ深く反省させられたのですが、刑務所というところが、障害者にとっての「最後のセーフティーネット」となっていたのです。

今年の7月に法務省が公表した『矯正統計統計表』によれば、2024年の1年間に出所した受刑者の総数は15,069人。そのうち、精神保健福祉法26条(精神に障害のある受刑者の出所については、帰住する都道府県に対し、あらかじめ通報しておかなければならない、という条文)にもとづいて、都道府県知事に通報した出所者は、3,345人です。刑務所当局は、精神障害者のみならず、知的障害者も通報の対象としています。したがって、全出所者の22.2%(15,069分の3,345)が精神や知的に障害のある人ということになります。

実のところ、この通報が有効に機能しているとは、とても思えない状況にあります。26条通報をしても、帰住先都道府県の福祉が動いてくれることは、まずありません。悲しいことに、罪を犯した人たちに対しては、福祉行政が率先して「危険人物視」し、そして「排除」をしてしまっているのです。

精神や知的に障害のある人が犯した罪は、おおかたが軽微な罪。パンやおにぎり1個の窃盗、あるいは無銭飲食といった「飢えを凌ぐため」の犯罪がほとんどです。それはまさに、「精神障害者や知的障害者は、貧困状態に陥りやすい」という、我が国の実情を示しているのではないでしょうか。

受刑者1人あたりに使われる法務省予算は、年間400万円ほどといわれています。受刑者に処方される薬の費用は、全額国費負担です。ですから、服薬の多い障害者、あるいは高齢受刑者の収監には、400万円をはるかに上回る予算が必要となります。そんな彼らです。刑務所内よりも、地域社会で支えたほうがいいに決まっています。

先週の金曜日、私は、長野県内の保護司の皆さんを前に、障害のある出所者への支援を訴えてきました。保護司というのは、出所者の生き直しに伴走してくださる方々です。

私の講演中、熱心に聞き入る保護司の皆さんの姿を目にし、大いに頼もしさを感じました。

障害があって、なおかつ犯罪歴のある人。これは、二重の意味で、社会から排除される対象となるかもしれません。

だからこそ、です。そんな人たちであっても、排除をしないということは、結果として、「どんな人であろうと、絶対に排除はされない」という、包摂の社会づくりにつながるのではないかと思います。

※新聞記事は、信濃毎日新聞。写真は、佐久市議の清水秀三郎さんのポストを引用